2010年03月06日
「宇高連絡線」に乗りに行ってきた。この航路の廃止がニュースで報じられたのは、1ヶ月ほど前のことだ。
岡山の宇野と、香川の高松を結ぶ宇高連絡線は、言わずもがな、かつて鉄道連絡線として本州と四国の鉄道を結んでいた歴史ある航路である。
個人的には、長年四国に住んでいながら、ついに乗る機会に恵まれずにここまで来てしまった感がある。今回が最初で最後の船旅(?)になるのだろうか。
■西へ。
と、その前に、西に向かうときには必ず姫路駅の「えきそば」を食べなければならない。播州赤穂行きの新快速を、わざわざ姫路で下車して「えきそば」を食う。
「えきそば」はやっぱり、天ぷらに限る。
■相生ダッシュ
山陽本線の姫路・岡山間は、ずいぶん久しぶりに乗るような。姫路から岡山までの直通列車がいつの間にやら少なくなっていて、日中は相生での乗り換えを余儀なくされる。
乗り換え駅の相生が近づくと、車内はにわかに賑わってきた。ドアの前には、乗り換えの人たちが群がり始める。流れる車窓から、ホームの向かい側をチラッと確認、お目当ての列車は、すでにホームに入線済みである。
プシュー。ドアが開くと同時に、みんな一斉にドアから飛び出した。ホームはさながら短距離走の会場と化し、選手はゴールとなる向かいの電車に吸い込まれていく。ドドドドド。
これが俗にいう、「相生ダッシュ」である。
(YouTubeに動画があった(画質悪し))
■水島臨海鉄道
宇野を目指す前に、少し寄り道して倉敷へ。第三セクターである「水島臨海鉄道」の乗り潰しに興じる。
駅は倉敷駅のすぐ近くにあるが、沿線に観光資源があるわけでもないので、観光客らしき人はいない。車両は単行ワンマンで、ひっそりとした地方鉄道の雰囲気がある。
「倉敷市」出発時にはそれなりに賑わっていた車内も、沿線の中核都市っぽい「水島」を過ぎると、見事に誰もいなくなった(もちろん運転士はいる)。
それにしてもこの列車、ビックリするくらい遅い。エンジン音が聞こえるのは、駅を出発してから5秒くらいの間だけで、あとはひたすら惰性走行で次の駅まで走り切ってしまう。
この運転方法だと、ディーゼル車の欠点が補えてしまっているように思える。地球に優しいエコ運転。遅くてもイライラしないのは、地方都市の落ち着いた雰囲気のなせる業か。
やがて、私と運転士だけを乗せたエコ列車は、終点の「三菱自工前」にゆるりと到着した。
地図を見れば一目瞭然、というか駅名からして一目瞭然であるが、駅は三菱自工の前にある。まわりは工業地帯であり、土曜の昼間には誰もいなくて当然である。雰囲気は、鶴見線のような感じだ。
駅全景。辺りに特筆すべきものは何もなく、工場しかない。
次の列車まで時間があるので、隣の「水島駅」まで歩いて引き返すことにする。工場地帯を抜け、水島港をウロウロと彷徨ったのち、線路の高架に沿って駅へ向かう。それにしても、人っ子ひとりいないが不気味である。
高架の分岐点が格好いい。左に伸びるのが三菱自工駅に続く旅客線で、右に伸びるのが貨物線。
そして通路。うん、見たら分かるよ。
一駅分の散歩を楽しんだ後は、また遅いエコ列車に乗って、倉敷市駅へと引き返す。終点に近づくにつれ、どんどん人が乗ってきて満員になった。
■チボリ公園
倉敷で少し時間があったので、「倉敷チボリ公園」を見に行ってみる。
ドーーーーン。
昔家族で来たのは10年くらい前か。すっかり寂れてしまって……。というか、跡形もない。
駅前は、こんなにも雰囲気があるのに、
公園はこんなの。寂しすぎる。
■倉敷~茶屋町ショートカット
宇高連絡線に乗るには、岡山から瀬戸大橋線で「茶屋町」まで行き、「宇野」へ向かう宇野線に乗り換えることになる。しかし、現在地の「倉敷」からその方面へ向かうには、鉄道だと随分遠回りである(地図参照)。
「18きっぷ」を使っているため、いくら遠回りでもタダ同然で行くことができる。でもここは、あえてバスでショートカットするべきだろう。ショートカットせよと言わんばかりの、線路と道路の配置が美しい。
そして私は倉敷でバスに乗り、
茶屋町でバスを降りた。シートカット成功。
地図を見ながら、こういうショートカット路線を探すのは楽しい。同じことをやってる人が何人かいたので、地元の人には当たり前なのだろう。
■宇野
約6年ぶりに乗る宇野線。茶屋町駅では、「瀬戸の花嫁」の入線メロディに乗せて、宇野行きの電車が入ってきた。
最近では全国各地の駅に駅メロが導入されているが、個人的にはこの「瀬戸の花嫁」(YouTube)が一番好きだ。旅情を誘うメロディだと思う。そもそも原曲が瀬戸内の島から島へ嫁に行く話なので、その旅立ちの情景が、瀬戸内の旅の風景に重なるのかもしれない。
ちなみに次に好きなメロディは、(駅メロではないが)寝台列車で流れる「ハイケンスのセレナーデ」(YouTube)。こちらはきっと、寝台列車の情景が曲の印象に影響を与えているのだろう。個人的には、すごく旅情を感じるメロディであるが、人によって全然感じ方が違いそう。
なんてことを考えていると、目的地である宇野に着いた。
宇高航路は、
四国フェリーと、
宇高国道フェリーが交互に出航している。今回は、宇高国道フェリーをチョイスした。
「国道」フェリーと名が付いているのは、そのまんま国道を走る船だから、らしい。岡山市を起点とした国道30号は、宇野駅前で突如途切れたかと思うと、高松側の宇高国道フェリー乗り場前から再び復活する。この間、国道30号は海上を結んでいることになっている。要は海上国道である。
よく知らなかったのだが、海上国道は全国に結構あるらしい(Wikipedia)。国道乗りつぶしをしている人は、船にも乗らないといけないので大変だ。
■宇高国道フェリー
待合室に入ると、真っ先に目に飛び込んできたのは、「運航継続」の案内。そう、実はこの旅に出る前日に、「運航休止の休止」(=継続)が発表されたのであった。それに続いて、もう一方の四国フェリーも運航継続の発表を行い、宇高連絡線は当面そのままということになっている。タイトルに「さらば?」とクエスチョンマークを付けたのは、これが影響している。
今回乗った「こくどう丸」の全景。少し遅れて宇野港に到着したので、出発時間も定刻より遅れている。それでも、誰も何も気にしていないのがさすが(特に何の案内もない)。実は私は、高松から乗る列車への接続があるので、少しだけビビッていた。でも気にしたら負けだ。
フェリーの定番、スロットコーナー。こんなの誰がやるのだろうと常々思っていたのだが、何年か前に別のフェリーに乗ったとき、一緒に乗った知り合いが延々と打っていたのを思い出す。
内装はやけにバブリィな雰囲気がある。所々に痛んでいる箇所も見受けられるが、特に補修する気もないようだ。気にしたら負けだ。
宇高連絡線といえば「うどん」。船内の売店で売ってたので、迷わず購入。……うそ。実を言うと、高松駅の「連絡船うどん」にしようかと迷った末、船内で食べることに意味があるのだと、勝手に納得した。
朝食は「えきそば」、昼食は「うどん」。ここまで食事は麺のみ。
展望デッキに出て、瀬戸大橋を望む。栄枯盛衰、盛者必衰。
とは言うものの、瀬戸大橋線はよく強風抑止になるため、いまでも宇高連絡線経由での鉄道代替輸送が行われている。瀬戸大橋のせいで日陰に追いやられた連絡線が、ピンチの時には瀬戸大橋のフォローにまわっている。そう考えると、連絡船の懐の深さを感じずにはいられない。
やがてフェリーは、高松港に到着した。
まず気になること、看板でかい。 「28分ごと」という表記は今やウソなのだが、直すに直せないのであろう。
■高松~徳島
フェリー乗り場から10分ほど歩くと、JR高松駅に着く。
久しぶりに来たもんだから、まずは自動改札があるのにビックリした。四国にもついに文明が……。
※JR四国では現在、高知駅と高松駅の2駅に自動改札が設置されている。2年前までは、自動改札なんてどこにもなかった。
これが何を意味するか、それは切符が磁気化されたということだ。
以前、都道府県庁所在地・代表駅の入場券を集めたとき、JR四国の駅の入場券は、すべて非磁気券(うらが白色のきっぷ)だった。自動改札が導入されたということは、少なくとも、ここ高松の入場券は磁気化されているはずである。
とりあえず買ってみた。
まぁ当然だが、磁気化されていた。ほのかな感動が押し寄せる。
たぶんこの感動は、長らく四国に住んでいて、鉄道が好きで、入場券を集めていないと分からないかもしれない。ごくごく限定された感動。四国すごい。
そんな風に四国に感動しながら、高松から2時間半、鈍行に揺られて地元・徳島へ向かう。
この相変わらずの遅さ。2時間半の乗車時間のうち、約30分が駅での待ち合わせ時間だった。
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徳島にて、今回の宇高連絡線の旅は終わりである。徳島駅は相変わらず有人改札だったため、ほっとした。
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