2011年09月10日
これまでのあらすじ(10年分)
今から10年と少し前の2000年10月21日。当時高校生だった私は、友人2人と共に『タイムカン』というカップヌードルを地中に埋蔵した(当時の様子)。
タイムカンとは、日清が2000年に限定発売したカップヌードルの一種である。特徴は「10年間保存が可能」という、文字通り"世紀を超えた"美味しさがウリの、まさにタイムカプセル的な食べ物なのであった。ゆえに、「10年間保存できるタイムカンを、タイムカプセルとして10年間埋めてしまおう」というのは、実に自然な考え方なのである。
しかしながら、その10年後の未来を待たずして、タイムカンは無念の自主回収となった。私が別途進めていた「タイムカン10ヵ年計画」により、2004年に食品不具合が発覚したのである。2010年4月には回収告知のテレビCMが放映されるなど、割と大々的な回収がなされ、タイムカンは2010年末の賞味期限を待たずして、歴史の表舞台から姿を消すこととなった。(当サイトとタイムカンとの関係について、詳細はこのエントリを参照)
だが、そんな回収騒動とは無関係に、2000年に埋めたタイムカンは地中に埋まり続けている。「10年後に3人で掘ろう」と、"secret base" ばりの誓いを立てて埋めたタイムカン。10年前は高校生だった埋蔵メンバも、今ではみんな社会人に。住む場所も、東京・大阪・筑波と地理的に散り散りになっており、なかなか集合の予定も合わせられないまま、ずるずると11年目の夏に突入していた。
「10年後に集合」と一口で言っても、実はいろんな社会的要因(主にサラリーマン的な)が、あり一筋縄ではいかないということを、10年前の私たちは知る由もないのであった。あゝ、年を取るのはイヤだなぁ。
さて、そんな延期に延期を重ねた「タイムカン掘り起こし」であるが、ここに来てようやく3人全員が集合できる目処が立ったのだ。それが2011年8月15日、埋蔵から10年10ヶ月が経った日のことであった。(長いあらすじ、終わり)
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2011年8月15日、早朝4時。埋蔵メンバ3人、マウントポイントに立つ。
埋蔵した場所が場所だけに、ひと気のない時間にこっそりと掘り起こすしかない、という判断で早朝に集合した(場所が場所だけに、一応モザイクをかけておく)。10年前に埋めた時はたしか夜中で、あやうく補導される寸前だったのを覚えている。まったく、何をやってるんだろうか。
しかしこんな早朝にも関わらず、すでに散歩を開始している老人が傍らを通り過ぎていく。これはゆっくりしてはいられないと、ライトとシャベルとスコップを手に、いそいそと穴掘り作業を開始した。
埋蔵場所の手がかりとなるのは、10年前の埋蔵時に撮影した写真である。マウントポイント決定の条件となった、「10年後でも変化がない場所であること」というのは見事に達成され、周囲は当時と全く同じ様子で、おそらく何の手も加えられていない状態で残っていた。
写真には人工物としてレンガが写っているので、それを基準にして掘る場所に狙いを定め、ひたすら穴を掘った。
穴を掘って、掘って、掘った。写真があるためすぐに見つかると思っていたタイムカンだが、意外となかなか見つからないもので、どんどん穴が広がっていく。結局、人目も憚らずに、1時間ばかりひたすら穴を掘ることになった(怪しい人だ)。
そして徐々に日が明けてきた午前5時過ぎ、ついに土の中に怪しい人工物を発見!?
タイムカンを包んでいたビニル袋(の残骸)が顔を出したのだ。10年ぶりの対面に息を飲む一同。
そのビニル袋(の残骸)の中には、紛れもなく10年前に埋めたタイムカンが収まっていた。あぁ、10年の間にすっかり姿が変わってしまって……。しかも、一緒にビニル袋に入れて埋めてあったメッセージボード(10年前の写真に写っている木の板)は、キレイさっぱり姿を消していた。土に還った……んだろうか。改めて、10年の歳月ってすごいもんだなぁ。
この10年の間に起こった出来事、主にタイムカン回収騒動などが走馬灯のように頭をよぎる。いろんな事があったけど、このタイムカンは、10年間ずっと同じ場所で土に埋まってたのである。時には花見客に踏み潰されながら、時には深い雪の下に埋もれながら、10年後に訪れる掘り出しの日を待っていたのである。すごいよタイムカン!
と、いろいろ感慨に浸りたい気持ちをグッと抑え、まずは1時間ばかり掘った穴を埋める作業を行わないといけない。10年間つねに気にかけてきたこの「マウントポイント」も、今日からは「旧マウントポイント」である。このまま記念植樹でもしたい気分だ。
そうこうしているうちに、すっかり日も明けてしまった。
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タイムカン埋蔵計画は、今回の掘り起こしによって幕を閉じた。最後に、10年間土の中に埋まっていたタイムカンの様子を観察することにしよう。
これが掘り起こされた10年モノのタイムカンである。10年間の長きにわたり土の中にいたタイムカンは、錆びや凹みこそあれども、それなりに原型を保っていた。さすがのブリキ缶である。ただし、蓋を開ける前からすでに異臭を放っていたため、中の様子は……。「10年後に美味しくタイムカンを食べよう」なんて言っていた当初の計画は、この時点でもろくも崩れ去ったのであった(当たり前である)。
タイムカンは、缶の中に普通のカップヌードルが収まる構造になっている。今回はその缶がボコボコになっていたため、カップヌードルを取り出すにも一苦労。慎重に取り出されたカップヌードルからは、さながら幾多の戦場をくぐり抜けたかのような貫禄が漂っていた。
ザ・タイムカンズ。汚いうえに異臭を放っているのだが、この汚れ具合がなぜか様になっていて格好よく感じてしまう。実際この写真を撮影していた時には、散歩中のおばさんがやって来て、興味深そうに撮影の様子を眺めた末に、「いろんな芸術があるねぇ」と関心して去っていかれた。それほどに格好いいのである!(でも本当はただの腐ったカップヌードルなんだけど)
さて、その格好いいカップヌードルの中身はどうなっているのだろう。
……見なかったことにしよう。麺は湿気によってドロドロになっていた。まぁ、そりゃそうだろう。
ところで、タイムカンの缶表面には、「10年後の自分へのメッセージ」という欄があり、自分でメッセージを書き込むことができるようになっていた。私は埋めるときにそこへメッセージを書いたらしくて(あんまり覚えていない)、掘り出した缶には何やら記してあった。えーと、なになに、
20世紀に流行ったもの 「電子計算機、豆乳、太陽の塔、森総理、世界不思議発見、プレイステーション、AIBO、どーも、うさじい、Mr.マリック、ねこの國、インターネット、NEC、NHKマン、ピカチュー、(その他解読不能なものがいくつか)」 どうだ、なつかしいだろ! 2000年10月21日
それは本当に20世紀に流行ったものなのか? と自分で突っ込みを入れたくなるような内容に思わず赤面してしまう。AIBO なんかは確かに頷ける内容ではあるが、NEC なんて会社名だし、他のもかなり嗜好が偏っている。もっとマシなことを書いておけばよかったと今さら思う、そんな10年前の自分からのメッセージ(?)であった。
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以上をもって、10年以上に及んだ『タイムカン埋蔵計画』は無事に完了し、それと同時に、タイムカンにまつわるあれこれの行事はすべて完了となった。ありがとうタイムカン、さようならタイムカン……。
この10年間は、土の中のタイムカンに思いを馳せたり、時にはマウントポイントの現地視察に行ったりと、それなりに楽しいタイムカンライフを送ることが出来た。個人的には、次の10年に向けてまた何かを埋めたいと思ってはいるが、まだ何を埋めるかは決まっていない。しばらくは、次の埋蔵物を探すことになりそうだ。
この汚い缶は、メンバ3人でそれぞれ1缶ずつ持って帰ることにした。たぶん一生捨てられないだろうなぁ、と思う。汚いけど。
http://www.nekopla.com/nnk/mt3/mt-tb.cgi/790
スゴイです。ドキュメントですよね。
思えばこのタイムカンの記事を
読んだのは、5年以上前になります。
以後、ずっと拝見しています。
どういう理由でこちらにお邪魔したのかは
今となっては謎です
タイムカンで検索したのでは
なかったと思います。
とても、意味のない事だと思います。
でも、すばらしい事だと思います
メンバーって、仲間っていいなと思いました。
>なにわ者さん
うれしいコメントありがとうございます。
5年以上も見ていただいて、しかも「いよいよ掘るぞ」と言いつつ1年近くも延期になった行事を見届けて頂けるなんて(T-T
タイムカンについては話題に事欠かなかったこともあり、感覚的には10年も経った気があんまりしてないので、あれからみんな10歳も年を取ってるのが不思議な感じです。
しかし確かに、10年経っても、またこんなしょうもないことのために集まれるメンバがいるというのは良いですね!
すばらしい・・・
感動しました。
確かタイムカンの回収騒ぎの時にこのサイトを見たと思いますが、ついに完結ですね。
>グリーンアローズさん
ありがとうございます、なんとか無事に完結することができました。
しかしその回収騒動も、何だかんだでもう7年も前なんですよね。
改めて思い返すと、10年のうちのほとんどは回収期間だったのかタイムカン……。
タイムボカン
とダジャレ・・・
>はなももさん
おお、たしかに……。
その発想はなかったです。
遅ればせながら拝見させていただきました。
なんか、「じ~ん」と来ちゃいましたよ。なんかこういうのいいね!
ぷち青春というか何というか。。。
て○○んもなんかこういうのできたらいいなぁ。。
おおお!ついに掘り起こされたのですね。
2010年の回収CMを見て、ブログをブックマークさせていただき
数ヶ月に一度チョコチョコチェックさせていただいておりました。
お忙しいんだろうなぁ、とは思っていたのですが、
きちんと実行されたとは・・・!!
メッセージボードが土に返っちゃってたのは残念でしたね。
いやぁ、いいですねぇ!!
>ぶりんさん
ありがとうございますー。
やはり何か共通の目標みたいなものがあると、達成したときの喜びが味わえて良いですね。
さて、何を埋めましょうか。
>ゆいころさん
1年以上もチョコチョコチェックして頂いてたなんて……感激です!
ありがとうございます、そしてお待たせ致しました。
今にして思えば、メッセージは石版にしておけば良かったですね。(今回の経験がないと思い付かないと思いますが)
しかし遺跡で見つかる木簡は土の中でどうなってるのか、気になるところではあります。
はじめまして^^
僕は今日、12年前に購入したタイムカンを実食しました。
実家の棚に大切に保管していたのですが、メッセージ欄の文字は消えているわ、懐かしき発泡スチロール容器の一部には変色が見られたりと、リコールが出るだけの変化はしていました。
食べてみての感想としましては・・・
・お湯を入れる前の状態は酸っぱい匂いがした
・エビ以外の具が酸っぱかった
・麺とスープは案外ふつーの味だった
・一部の乾燥ネギは黒く変色していた
という感じです^^
今更ですが、話のネタとして是非お役だてくださいw
>tsujimacさん
どうもはじめまして。
そして、報告ありがとうございます。まさか、12年目にして食べる方がいたとは!
私が最後に食べたのは8年前なんですが、その時点ですでに
発泡スチロールは変色して、酸っぱい匂いがしてた気がします。
あれから8年経ってることを考えると、ホントよく食べられましたねw
貴重なレポートとして語り継がせて頂きます。
初めまして!
こんなアホな事を出来る親友は素晴らしい事ですね。一生の宝ですね!さて小生は10年後行き倒れてもこれで安心だと思いタイムカンを買ったかは定かではないですけど話のネタに買い10年後を楽しみにして台所の奥に定温で保存してましたがあの回収騒動を知りましたが自己責任でいまだ開けずにひっそりと保存?寝かしてます。20年後位に忘れた頃に開けて見ようかと思ってますf(^_^;
>ポニョさん
初めまして! コメント頂きありがとうございます。
おお、まだタイムカン保管してあるんですね。
私もまだ一缶持ってるんですが、果たしてどんなことになってるんでしょうね……。
早いもので、発売からもう14年。20年もあっと言う間に来てしまいそうです。そうなったら私も開けてみたいと思いますw
初めまして。
実はこの企画
タイムカン10カ年計画のページが公開されてからずっと見てました。
当時は私もまだ学生だったのですが
今はもう、そろそろおっさん域に入りかけですw
回収騒ぎになったとき地面に埋められた物が残っているのでそれを掘り出す2010年を楽しみにしてました。
そして2010年に見に来たとき、
掲示版に「事情があってまだ掘り出せてない」
とコメントがあったのを覚えています。
それからまたしばらく経ち
今日ふとこのページのことを思い出して見に来たら
完結編が書いてあってちょっと感動しました(笑)
このページはきっと
タイムカンだけでなく訪問者のいろんな思い出保管していたんだと思いますよ!
そして10年って長い。。
これからの10年もまた何か埋めてはいかがでしょうかww
>odpさん
どうもはじめまして。
すごい! そんな前から見て下さってたんですね。
なかなか埋蔵時のメンバの都合が付かず、ようやく全員で集まれたのがこの記事の時でした。
また次の10年に向けての何かを埋める計画もあったのですが、結局できないまま、いつの間にかさらに4年が経ってしまいました。
ああ、月日が経つのは早いですね……。
月日が経っても、こうしてふいに思い出してくださる方がいるのはとても嬉しいです。ありがとうござました。