私がまだ小学生だった頃、週刊ファミコン通信に連載されていた「ファミ通のアレ(仮題)」(作:竹熊健太郎、画:羽生生純)という漫画を毎週楽しみにしていた。そのなかでも、特に印象に残っていて20年ほど経った今でもよく思い出すのが、第56回 「続編」とは何か? という回である。
現在単行本は絶版になっていて薦めることは出来ないのだけれど、なんと最近になってデジタルリマスター版としてウェブで読めるようになったのである。うれしい。というわけで、その漫画がこちら。
『ファミ通のアレ(仮題)』 第56回 「続編」とは何か?
(電脳MAVO ファミ通のアレ(仮題)デジタルリマスター)
このなかで、当時小学生だった私が衝撃を受けたのが、映画「悪名」の命名則のくだりである。「悪名」は、続編のタイトルがこうなっているらしいのだ。
- 悪名
- 続悪名
- 新悪名
- 続新悪名
もう、これだけで心がしびれる。続編が「続」で、その続編が「新」で、そのまた続編が「続新」なのだ。
この、作中で言うところの「正しいシリーズタイトルの付け方」に感化されて、以来シリーズの命名則みたいなのが気になって仕方がない。iPad2 の次機種が、「iPad3」ではなく「新しいiPad」(New iPad)と発表されたとき、ひとり小躍りしていたのは言うまでもない。Appleの中の人もきっと、「ファミ通のアレ(仮題)」を読んだに違いないのである(憶測)。そしてその次のiPadは、「続・新しいiPad」(Sequel to New iPad)に違いないのである。
ちなみにこの悪名、5作目は「新・続新悪名」ではなく「第三の悪名」だということが紹介されているけれど、その後のシリーズ名も素敵である。Wikipediaの「悪名」の項によると、
- 悪名
- 続悪名
- 新悪名
- 続新悪名
- 第三の悪名
- 悪名市場
- 悪名波止場
- 悪名一番
- 悪名太鼓
- 悪名幟
- 悪名無敵
- 悪名桜
- 悪名一代
- 悪名十八番
- 悪名一番勝負
- 悪名縄張荒らし
悪名すごい! 実は「悪名」という映画を見たことはないのだけれど、もうタイトルを見ただけでしびれる。こんな素晴らしいシリーズ名は、他に類を見ないと思う。
ただし残念なのが、「悪名縄張荒らし」(しまあらし、と読むらしい)の次からである。2001年に、初代「悪名」がそのまんま「悪名」として再映画化されているらしいのだけど、その続編がなんと「悪名2」なのである。ツー! ナンバリングタイトルに落ちてしまった悪名に明日はあるのか。
そんな悪名の意思を継ぐ(と勝手に決めている)のが、「富江」シリーズである。あの伊藤潤二の「富江」であるが、これまでに8回映画化されているらしい。こちらもWikipediaの「富江」の項から引用すると、
- 富江
- 富江 replay
- 富江 re-birth
- 富江 最終章 -禁断の果実-
- 富江 BEGINNING
- 富江 REVENGE
- 富江 vs 富江
- 富江 アンリミテッド
富江すごい! 悪名と違って英語が混じっているところが現代的であるが、その根底に流れるシリーズ命名精神は共通していると言っていい。「悪名」と「富江」、どちらも漢字二文字で、その辺にもシンパシーを感じてしまう。何にせよ、今後の「富江」からは目が離せない。
さて、映画以外のシリーズ名にも目を向けてみる。
まず、花王が発売しているクレンザー、「ホーミング」。このシリーズは、以下のような名称になっている。
こちらは、「(無印)」「ニュー」「スーパー」という、王道的なシリーズ名になっており好感が持てる。ぜひ次は「ハイパーホーミング」を発売して欲しい。ちなみに、ホテルチェーンに「スーパーホテル」と「ハイパーホテル」があるが、これらはシリーズというわけではないようなので注意されたし。
そして最後に見ていくのが、「ユンケル」シリーズである。「ユンケル」に関しては、公式ページにそのシリーズラインナップが一覧で載っているのでありがたい。こちら。
ユンケルは、これまで見てきたシリーズ名とは少し毛色が違うのだけれど、非常に高度な命名をしている。まずは、
これは、音引き(ー)によってラインナップを構築しているパターン。ほとんど同じ! ユンケルすごい!
そして、
これは、ハイフン(-)によってラインナップを構築しているパターン。ほとんど同じ! ユンケルすごい!
他にも、
ほとんどのシリーズが「ユンケル」と「黄帝」というパーツから構成されているのに、その「黄帝」があるか無いかでラインナップを構築してしまうパターン。
そして、ほとんどの名前が「ユンケル」と「黄帝」というパーツから構成されているのに、その「黄帝」と「ロイヤル」の並び順でラインナップを構築し、あまつさえそれに「2」などとナンバリングしてしまうパターン。
ユンケルすごい! ここまでくると、もはやユンケルの策(それが何の策かは分からないけれど)にまんまとはまっているのではないかと思えてくる。
かように、シリーズ名を見るだけで人(というか私)はここまで感動できるし、これからも美しいシリーズ名を集めていきたいと思っている。